百人一首 ひらがな カタカナ

     てんぢてんわう
-----天智天皇
     テンジテンノウ
  あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
1 秋の田の かりほ(仮庵)の庵の 苫をあらみ 我が衣手は 露にぬれつつ
  アキノタノ カリオノイオノ トマオアラミ ワガコロモデワ ツユニヌレツツ




     ぢとうてんわう
-----持統天皇
     ジトウテンノウ
  はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
2 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山
  ハルスギテ ナツキニケラシ シロタエノ コロモホスチョウ アマノカグヤマ




     かきのもとのひとまろ
-----柿本人麻呂
     カキノモトノヒトマロ
  あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
3 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
  アシビキノ ヤマドリノオノ シダリオノ ナガナガシヨオ ヒトリカモネン




     やまべのあかひと
-----山部赤人
     ヤマベノアカヒト
  たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
4 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
  タゴノウラニ ウチイデテミレバ シロタエノ フジノタカネニ ユキワフリツツ




     さるまるだゆう
-----猿丸大夫
     サルマルダユウ
  おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき
5 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
  オクヤマニ モミジフミワケ ナクシカノ コエキクトキゾ アキワカナシキ




     ちゅうなごんやかもち
-----中納言家持
     チュウナゴンヤカモチ
  かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
6 鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
  カササギノ ワタセルハシニ オクシモノ シロキオミレバ ヨゾフケニケル




     あべのなかまろ
-----安倍仲麿
     アベノナカマロ
  あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
7 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
  アマノハラ フリサケミレバ カスガナル ミカサノヤマニ イデシツキカモ




     きせんほふし
-----喜撰法師
     キセンホウシ
  わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
8 わが庵は 都の辰巳 しかぞ住む 世をうぢ山(宇治山)と 人はいふなり
  ワガイオワ ミヤコノタツミ シカゾスム ヨオウジヤマト ヒトワイウナリ




     をののこまち
-----小野小町
     オノノコマチ
  はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
9 花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせし間に
  ハナノイロワ ウツリニケリナ イタズラニ ワガミヨニフル ナガメセシマニ




     せみまる
-----蟬丸
     セミマル
   これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
10 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関
   コレヤコノ ユクモカエルモ ワカレテワ シルモシラヌモ オウサカノセキ




     さんぎたかむら
-----参議篁
     サンギタカムラ
   わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
11 わたのはら 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣り舟
   ワタノハラ ヤソシマカケテ コギイデヌト ヒトニワツゲヨ アマノツリブネ




     そうじやうへんぜう
-----僧正遍昭
     ソウジョウヘンジョウ
   あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ(吹き閉ぢよ) をとめのすがた しばしとどめむ
12 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ(吹き閉ぢよ) 乙女の姿 しばしとどめむ
   アマツカゼ クモノカヨイジ フキトジヨ オトメノスガタ シバシトドメン




     やうぜいゐん
-----陽成院
     ヨウゼイイン
   つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
13 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞ積もりて 淵となりぬる
   ツクバネノ ミネヨリオツル ミナノガワ コイゾツモリテ フチトナリヌル




     かはらのさだいじん
-----河原左大臣
     カワラノサダイジン
   みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
14 陸奥の しのぶもぢずり(捩摺り) 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに
   ミチノクノ シノブモジズリ タレユエニ ミダレソメニシ ワレナラナクニ




     くわうかうてんわう
-----光孝天皇
     コウコウテンノウ
   きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
15 君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ
   キミガタメ ハルノノニイデテ ワカナツム ワガコロモデニ ユキワフリツツ




     ちゆうなごんゆきひら
-----中納言行平
     チユウナゴンユキヒラ
   たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
16 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
   タチワカレ イナバノヤマノ ミネニオウル マツトシキカバ イマカエリコン




     ありはらのなりひらのあそん
-----在原業平朝臣
     アリワラノナリヒラアソン
   ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくぐるとは
17 ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐ(唐紅)に 水くぐるとは
   チハヤブル カミヨモキカズ タツタガワ カラクレナイニ ミズクグルトワ




     ふぢはらのとしゆきのあそん
-----藤原敏行朝臣
     フジワラノトシユキアソン
   すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
18 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
   スミノエノ キシニヨルナミ ヨルサエヤ ユメノカヨイジ ヒトメヨクラン




     いせ
-----伊勢
     イセ
   なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや
19 難波潟 短き蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
   ナニワガタ ミジカキアシノ フシノマモ アワデコノヨオ スグシテヨトヤ




     もとよししんわう
-----元良親王
     モトヨシシンノウ
   わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
20 わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
   ワビヌレバ イマハタオナジ ナニワナル ミオツクシテモ アワントゾオモウ




     そせいほふし
-----素性法師
     ソセイホウシ
   いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
21 今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
   イマコント イイシバカリニ ナガツキノ アリアケノツキオ マチイデツルカナ




     ふんやのやすひで
-----文屋康秀
     フンヤノヤスヒデ
   ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
22 吹くからに 秋の草木の しほるれば(萎るれば) むべ山風を あらしといふらむ
   フクカラニ アキノクサキノ シオルレバ ムベヤマカゼオ アラシトイウラン




     おほえのちさと
-----大江千里
     オオエノチサト
   つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
23 月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
   ツキミレバ チジニモノコソ カナシケレ ワガミヒトツノ アキニワアラネド




     くわんけ
-----菅家
     カンケ
   このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに
24 このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに
   コノタビワ ヌサモトリアエズ タムケヤマ モミジノニシキ カミノマニマニ




     さんでうのうだいじん
-----三条右大臣
     サンジョウノウダイジン
   なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな
25 名にし負はば 逢坂山の さねかづら(真葛) 人に知られで くるよしもがな
   ナニシオワバ オウサカヤマノ サネカズラ ヒトニシラレデ クルヨシモガナ




     ていしんこう
-----貞信公
     テイシンコウ
   をぐらやま みねのもみぢば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ
26 小倉山 峰の紅葉ば 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
   オグラヤマ ミネノモミジバ ココロアラバ イマヒトタビノ ミユキマタナン




     ちゆうなごんかねすけ
-----中納言兼輔
     チュウナゴンカネスケ
   みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ
27 みかの原 わきて流るる いづみ(泉)川 いつ見きとてか 恋しかるらむ
   ミカノハラ ワキテナガルル イズミガワ イツミキトテカ コイシカルラン




     みなもとのむねゆきのあそん
-----源宗于朝臣
     ミナモトノムネユキアソン
   やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば
28 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
   ヤマザトワ フユゾサビシサ マサリケル ヒトメモクサモ カレヌトオモエバ




     おほしかふちのみつね
-----凡河内躬恒
     オオシコウチノミツネ
   こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
29 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
   ココロアテニ オラバヤオラン ハツシモノ オキマドワセル シラギクノハナ




     みぶのただみね
-----壬生忠岑
     みぶのただみね
   ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
30 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
   アリアケノ ツレナクミエシ ワカレヨリ アカツキバカリ ウキモノワナシ




     さかのうへのこれのり
-----坂上是則
     サカノウエノコレノリ
   あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
31 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
   アサボラケ アリアケノツキト ミルマデニ ヨシノノサトニ フレルシラユキ




     はるみちのつらき
-----春道列樹
     ハルミチノツラキ
   やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
32 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
   ヤマガワニ カゼノカケタル シガラミワ ナガレモアエヌ モミジナリケリ




     きのとものり
-----紀友則
     キノトモノリ
   ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ
33 ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心(静心)なく 花の散るらむ
   ヒサカタノ ヒカリノドケキ ハルノヒニ シズゴコロナク ハナノチルラン




     ふぢはらのおきかぜ
-----藤原興風
     フジワラノオキカゼ
   たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
34 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
   タレオカモ シルヒトニセン タカサゴノ マツモムカシノ トモナラナクニ




     きのつらゆき
-----紀貫之
     キノツラユキ
   ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
35 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける
   ヒトワイサ ココロモシラズ フルサトワ ハナゾムカシノ カニニオイケル




     きよはらのふかやぶ
-----清原深養父
     キヨハラノフカヤブ
   なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
36 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
   ナツノヨワ マダヨイナガラ アケヌルオ クモノイズコニ ツキヤドルラン




     ふんやのあさやす
-----文屋朝康
     フンヤノアサヤス
   しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
37 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
   シラツユニ カゼノフキシク アキノノワ ツラヌキトメヌ タマゾチリケル




     うこん
-----右近
     ウコン
   わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
38 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
   ワスラルル ミオバオモワズ チカイテシ ヒトノイノチノ オシクモアルカナ




     さんぎひとし
-----参議等
     サンギヒトシ
   あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
39 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき
   アサジウノ オノノシノハラ シノブレド アマリテナドカ ヒトノコイシキ




     たいらのかねもり
-----平兼盛
     タイラノカネモリ
   しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
40 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
   シノブレド イロニイデニケリ ワガコイワ モノヤオモウト ヒトノトウマデ




     みぶのただみ
-----壬生忠見
     ミブノタダミ
   こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
41 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
   コイスチョウ ワガナワマダキ タチニケリ ヒトシレズコソ オモイソメシカ




     きよはらのもとすけ
-----清原元輔
     キヨハラノモトスケ
   ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは
42 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは
   チギリキナ カタミニソデオ シボリツツ スエノマツヤマ ナミコサジトワ




     ごんちゆうなごんあつただ
-----権中納言敦忠
     ゴンチュウナゴンアツタダ
   あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり
43 逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
   アイミテノ ノチノココロニ クラブレバ ムカシワモノオオモワザリケリ




     ちゆうなごんあさただ
-----中納言朝忠
     チュウナゴンアサタダ
   あふことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし
44 逢ふことの たえてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
   アウコトノ タエテシナクワ ナカナカニ ヒトオモミオモ ウラミザラマシ




     けんとくこう
-----謙徳公
     ケントクコウ
   あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな
45 あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
   アワレトモ イウベキヒトワ オモオエデ ミノイタズラニ ナリヌベキカナ




     そねのよしただ
-----曾禰好忠
     ソネノヨシタダ
   ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな
46 由良の門を 渡る舟人 梶を絶え 行方も知らぬ 恋の道かな
   ユラノトオ ワタルフナビト カジオタエ ユクエモシラヌ コイノミチカナ




     えぎやうほふし
-----恵慶法師
     エギョウホウシ
   やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
47 八重葎 茂れる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
   ヤエムグラ シゲレルヤドノ サビシキニ ヒトコソミエネ アキワキニケリ




     みなもとのしげゆき
-----源重之
     ミナモトノシゲユキ
   かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな
48 風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
   カゼオイタミ イワウツナミノ オノレノミ クダケテモノオ オモウコロカナ




     おほなかとみのよしのぶのあそん
-----大中臣能宣朝臣
     オオナカトミノヨシノブアソン
   みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ
49 御垣守 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ
   ミカキモリ エジノタクヒノ ヨルワモエ ヒルワキエツツ モノオコソオモエ




     ふぢはらのよしたか
-----藤原義孝
     フジワラノヨシタカ
   きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
50 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
   キミガタメ オシカラザリシ イノチサエ ナガクモガナト オモイケルカナ




     ふぢはらのさねかたのあそん
-----藤原実方朝臣
     フジワラノサネカタアソン
   かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
51 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを
   カクトダニ エヤワイブキノ サシモグサ サシモシラジナ モユルオモイオ




     ふじはらのみちのぶのあそん
-----藤原道信朝臣
     フジワラノミチノブアソン
   あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな
52 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
   アケヌレバ クルルモノトワ シリナガラ ナオウラメシキ アサボラケカナ




     うだいしやうみちつなのはは
-----右大将道綱母
     ウダイショウミチツナノハハ
   なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる
53 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
   ナゲキツツ ヒトリヌルヨノ アクルマワ イカニヒサシキ モノトカワシル




     ぎどうさんしのはは
-----儀同三司母
     ギドウサンシノハハ
   わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
54 忘れじの 行末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな
   ワスレジノ ユクスエマデワ カタケレバ キョウオカギリノ イノチトモガナ




     だいなごんきんたふ
-----大納言公任
     ダイナゴンキントウ
   たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ
55 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
   タキノオトワ タエテヒサシク ナリヌレド ナコソナガレテ ナオキコエケレ




     いづみしきぶ
-----和泉式部
     イズミシキブ
   あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな
56 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな
   アラザラン コノヨノホカノ オモイデニ イマヒトタビノ アウコトモガナ




     むらさきしきぶ
-----紫式部
     ムラサキシキブ
   めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな
57 めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
   メグリアイテ ミシヤソレトモ ワカヌマニ クモガクレニシ ヨワノツキカナ




     だいにのさんみ
-----大弐三位
     ダイニノサンミ
   ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする
58 有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
   アリマヤマ イナノササハラ カゼフケバ イデソヨヒトオ ワスレヤワスル




     あかぞめゑもん
-----赤染衛門
     アカゾメエモン
   やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな
59 やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
   ヤスラワデ ネナマシモノオ サヨフケテ カタブクマデノ ツキオミシカナ




     こしきぶのないし
-----小式部内侍
     コシキブノナイシ
   おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて
60 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
   オオエヤマ イクノノミチノ トオケレバ マダフミモミズ アマノハシダテ




     いせのたいふ
-----伊勢大輔
     イセノタイフ
   いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな
61 いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな
   イニシエノ ナラノミヤコノ ヤエザクラ キョウココノエニ ニオイヌルカナ




     せいせうなごん
-----清少納言
     セイショウナゴン
   よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ
62 夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ
   ヨオコメテ トリノソラネワ ハカルトモ ヨニオウサカノ セキワユルサジ




     さきやうのだいぶみちまさ
-----左京大夫道雅
     サキョウノダイブミチマサ
   いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
63 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
   イマワタダ オモイタエナン トバカリオ ヒトズテナラデ イウヨシモガナ




     ごんちゆうなごんさだより
-----権中納言定頼
     ゴンチュウナゴンサダヨリ
   あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ
64 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
   アサボラケ ウジノカワギリ タエダエニ アラワレワタル セゼノアジロギ




     さがみ
-----相模
     サガミ
   うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ
65 恨みわび 干さぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
   ウラミワビ ホサヌソデダニ アルモノオ コイニクチナン ナコソオシケレ




     さきのだいそうじやうぎやうそん
-----前大僧正行尊
     サキノダイソウジョウギョウソン
   もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし
66 もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
   モロトモニ アワレトオモエ ヤマザクラ ハナヨリホカニ シルヒトモナシ




     すはうのないし
-----周防内侍
     スオウノナイシ
   はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
67 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひ(甲斐)なくたたむ 名こそ惜しけれ
   ハルノヨノ ユメバカリナル タマクラニ カイナクタタン ナコソオシケレ




     さんでうゐん
-----三条院
     サンジョウイン
   こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
68 心にも あらでうき世に 長らへば 恋しかるべき 夜半の月かな
   ココロニモ アラデウキヨニ ナガラエバ コイシカルベキ ヨワノツキカナ




     のういんほふし
-----能因法師
     ノウインホウシ
   あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり
69 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり
   アラシフク ミムロノヤマノ モミジバワ タツタノカワノ ニシキナリケリ




     りやうぜんほふし
-----良暹法師
     リョウゼンホウシ
   さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづくもおなじ あきのゆふぐれ
70 さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮れ
   サビシサニ ヤドオタチイデテ ナガムレバ イズクモオナジ アキノユウグレ




     だいなごんつねのぶ
-----大納言経信
     ダイナゴンツネノブ
   ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく
71 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろやに 秋風ぞ吹く
   ユウサレバ カドタノイナバ オトズレテ アシノマロヤニ アキカゼゾフク




     いうしないしんわうけのきい
-----祐子内親王家紀伊
     ユウシナイシンノウケノキイ
   おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ
72 音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
   オトニキク タカシノハマノ アダナミワ カケジヤソデノ ヌレモコソスレ




     さきのごんちゆうなごんまさふさ
-----前権中納言匡房
     サキノゴンチュウナゴンマサフサ
   たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
73 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
   タカサゴノ オノエノサクラ サキニケリ トヤマノカスミ タタズモアラナン




     みなもとのとしよりのあそん
-----源俊頼朝臣
     ミナモトノトシヨリアソン
   うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを
74 憂かりける 人をはつせ(初瀬)の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
   ウカリケル ヒトオハツセノ ヤマオロシヨ ハゲシカレトワ イノラヌモノオ




     ふぢはらのもととし
-----藤原基俊
     フジワラノモトヨシ
   ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり
75 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
   チギリオキシ サセモガツユオ イノチニテ アワレコトシノ アキモイヌメリ




     ほつしやうじのにふだうさきのくわんぱくだいじやうだいじん
-----法性寺入道前関白太政大臣
     ホッショウジニュウドウサキノカンパクダイジョウダイジン
   わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
76 わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波
   ワタノハラ コギイデテミレバ ヒサカタノ クモイニマガウ オキツシラナミ




     すとくゐん
-----崇徳院
     ストクイン
   せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ
77 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
   セオハヤミ イワニセカルル タキガワノ ワレテモスエニ アワントゾオモウ




     みなもとのかねまさ
-----源兼昌
     ミナモトノカネマサ
   あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり
78 淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝覚めぬ 須磨の関守
   アワジシマ カヨウチドリノ ナクコエニ イクヨネザメヌ スマノセキモリ




     さきやうのだいぶあきすけ
-----左京大夫顕輔
     サキョウノダイブアキスケ
   あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ
79 秋風に たなびく雲の たえ間より 漏れ出づる月の 影のさやけさ
   アキカゼニ タナビククモノ タエマヨリ モレイズルツキノ カゲノサヤケサ




     たいけんもんゐんのほりかは
-----待賢門院堀河
     タイケンモンインノホリカワ
   ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ
80 ながからむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ
   ナガカラン ココロモシラズ クロカミノ ミダレテケサワ モノオコソオモエ




     ごとくだいじのさだいじん
-----後徳大寺左大臣
     ゴトクダイジノサダイジン
   ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
81 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる
   ホトトギス ナキツルカタオ ナガムレバ タダアリアケノ ツキゾノコレル




     だういんほふし
-----道因法師
     ドウインホウシ
   おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり
82 思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
   オモイワビ サテモイノチワ アルモノオ ウキニタエヌハ ナミダナリケリ




     くわうたいごうぐうのだいぶしゆんぜい
-----皇太后宮大夫俊成
     コウタイゴウグウノダイブシュンゼイ
   よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる
83 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
   ヨノナカヨ ミチコソナケレ オモイイル ヤマノオクニモ シカゾナクナル




     ふぢはらのきよすけのあそん
-----藤原清輔朝臣
     フジワラノキヨスケアソン
   ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
84 ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
   ナガラエバ マタコノゴロヤ シノバレン ウシトミシヨゾ イマワコイシキ




     しゆんゑほふし
-----俊恵法師
     シュンエホウシ
   よもすがら ものおもふころは あけやらぬ ねやのひまさへ つれなかりけり
85 夜もすがら もの思ふころは 明けやらぬ 閨のひまさへ つれなかりけり
   ヨモスガラ モノオモウコロワ アケヤラヌ ネヤノヒマサエ ツレナカリケリ




     さいぎやうほふし
-----西行法師
     サイギョウホウシ
   なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな
86 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな
   ナゲケトテ ツキヤワモノオ オモワスル カコチガオナル ワガナミダカナ




     じやくれんほふし
-----寂蓮法師
     ジャクレンホウシ
   むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ
87 村雨の 露もまだ干ぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
   ムラサメノ ツユモマダヒヌ マキノハニ キリタチノボル アキノユウグレ




     くわうかもんゐんのべつたう
-----皇嘉門院別当
     コウカモンインノベットウ
   なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき
88 難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ(故) みをつくしてや 恋ひわたるべき
   ナニワエノ アシノカリネノ ヒトヨユエ ミオツクシテヤ コイワタルベキ




     しよくしないしんわう
-----式子内親王
     ショクシナイシンノウ
   たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よわりもぞする
89 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
   タマノオヨ タエナバタエネ ナガラエバ シノブルコトノ ヨワリモゾスル




     いんぷもんゐんのたいふ
-----殷富門院大輔
     インプモンインノタイフ
   みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず
90 見せばやな 雄島の海人の 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず
   ミセバヤナ オジマノアマノ ソデダニモ ヌレニゾヌレシ イロワカワラズ




     ごきやうごくせつしやうさきのだいじゃうだいじん
-----後京極摂政前太政大臣
     ゴキョウゴクセッショウサキノダイジョウダイジン
   きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ
91 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき(片敷き) ひとりかも寝む
   キリギリス ナクヤシモヨノ サムシロニ コロモカタシキ ヒトリカモネン




     にでうゐんのさぬき
-----二条院讃岐
     ニジョウインノサヌキ
   わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし
92 わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし
   ワガソデワ シオヒニミエヌ オキノイシノ ヒトコソシラネ カワクマモナシ




     かまくらのうだいじん
-----鎌倉右大臣
     カマクラノウダイジン
   よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのこぶねの つなでかなしも
93 世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも
   ヨノナカワ ツネニモガモナ ナギサコグ アマノオブネノ ツナデカナシモ




     さんぎまさつね
-----参議雅経
     サンギマサツネ
   みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
94 み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり
   ミヨシノノ ヤマノアキカゼ サヨフケテ フルサトサムク コロモウツナリ




     さきのだいそうじやうじゑん
-----前大僧正慈円
     サキノダイソウジョウジエン
   おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで
95 おほけなく 憂き世の民に おほふ(覆ふ)かな わが立つ杣に すみ(墨)染めの袖
   オオケナク ウキヨノタミニ オオウカナ ワガタツソマニ スミゾメノソデ




     にふだうさきのだいじやうだいじん
-----入道前太政大臣
     ニュウドウサキノダイジョウダイジン
   はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
96 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
   ハナサソウ アラシノニワノ ユキナラデ フリユクモノワ ワガミナリケリ




     ごんちゆうなごんていか
-----権中納言定家
     ゴンチュウナゴンテイカ
   こぬひとを まつほ(松帆)のうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
97 来ぬ人を まつ帆の浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
   コヌヒトオ マツオノウラノ ユウナギニ ヤクヤモシオノ ミモコガレツツ




     じゆにゐいへたか
-----従二位家隆
     ジュニイイエタカ
   かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
98 風そよぐ 楢の小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける
   カゼソヨグ ナラノオガワノ ユウグレワ ミソギゾナツノ シルシナリケル




     ごとばゐん
-----後鳥羽院
     ゴトバイン
   ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは
99 人もをし(惜し) 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は
   ヒトモオシ ヒトモウラメシ アジキナク ヨオオモウユエニ モノオモウミワ




     じゆんとくゐん
-----順徳院
     ジュントクイン
    ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり
100 ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
    モモシキヤ フルキノキバノ シノブニモ ナオアマリアル ムカシナリケリ